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高山や海岸の崖に生え、幹は地を這い斜上する枝は高さ50cm位にしかなりません。 千島から台湾に分布するミヤマビャクシンを盆栽として真拍と呼びます。 松柏盆栽のなかでは、黒松と並び代表的樹種です。 寿命は長く、成長遅鈍、神付き古木が尊重されます。 真拍は石灰岩の山に生えています。 葉が貝塚イブキのように丸くて細いが、杉のような葉も出ます。 成長過程で部分的に枯れたり、虫食いなどでジンやシャリと呼ばれる骨状部が出来てこれが見所となります。 樹形は特に決まりはなく、神付き山採り物を枝や幹を曲げ込んで整えたこともあり、その樹の形なりに鑑賞されます。 産地によって葉性が異なるため、好みの特性を糸魚川シンパク・紀州シンパクなどと産地名で呼びます。 北海道から全国に分布し、石灰岩地帯に生えています。 真拍は元々地上スレスレが一番太く上に行くほど枝分かれして細くなります。 地下に向かっても同様にスレスレが一番太くだんだんと細くなります。 そして、シャリが出来てくると地上スレスレが小枝も小根も無くなりかなり上の細くなった所に生きた枝葉を持ち、地下の先の方に生きた小根を持つようになります。 このような樹を鉢に植えてもバランスが取れないし鉢に植え切れないので手繰り込みのテクニックが秘伝として伝えられているようです。 最近は継ぎ枝・継ぎ根を行なってシャリを活用した盆栽が作られています。 この技を発展させて継ぎ幹を行なえばもっと利用範囲が広がるものと思われますが、従来からあるたぬき作りとの境界もピンキリの差が出てくるでしょう。 |
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盆栽趣味は老人の道楽のようなものといわれます。 若い人は中々近づき難いのはなぜでしょうか。 裾野が小さい中で、盆栽園を経営するには単価を上げる必要があり逆スパイラルになる要素があります。 時には、新人に向けて若いモヤシ苗に神シャリを作って良い価格設定で売り逃げるようなことを行ったりしてしまう。 ペット・ガーデン・ブームと盆栽の間には全く別の企業の垣根があり、趣味として自然に移行できないような感じがします。 皮を剥いで神や舎利を作る。 5月頃が皮を剥ぎ易い、夏になると皮が剥き難くなり作業が進まない。 木は皮部と木部で出来ている。 そしてその境が形成層です。 木部には導管があり、根から水分や養分を吸い上げている。 また、セルロースが固くリグニンで固められていて倒れないように保持している。 導管は根から先端まで一本で繋がっているのではなく長く送水する時にポンプを何台も連結して送水するように10m以上でも送ることができる。 一気圧の元では10mまでしか水柱ができないが、導管を連結したり葉の負圧や毛細管現象や根の浸透圧などで木はもっと高く育つ事ができる。 皮部には篩管があり、葉で光合成した糖分を下部に送っている。 幸か不幸か糖分が表面にある皮部を通ることで昆虫などが養分を取りやすくなっている。 形成層が皮と木を細胞分裂して作っている。 そして、細胞分裂する状態が皮剥ぎが容易か難しいかの分かれ目であり、生育適温か否か、春材を作っているのか秋材を作っているのかで変わる。 そこで、春に盛んに水揚げを行ない形成層が水分豊富になり春材と糖分を流す篩管を細胞分裂して作り出す。 夏には春材を作り続けるが、養分の生産は春ほど急激な増加を見込めなくなり篩管の増加率は減少する。 秋には固い年輪になる秋材になってくる。 このような経過を辿ると思われ、剥がれ易さに変化がでるものと思われる。 皮を剥くのは春に限ると言いたいが、春は他にも仕事があって他の季節でもよろしいと言う事です。 これを経験から4月後半から5月後半まで剥ぎ易いシーズンと言えるようです。 神や舎利は皮を剥いで部分的に枯れ木とするのでその部分は腐っていきます。 生きていれば防腐成分によって保護されていますが神や舎利は木材腐朽菌によってしだいに朽ちていきます。 木材は形成層で作成されてから20年位で死滅しますがこの時に導管や組織内が樹脂や防腐効果の高い成分で固められます。 そして木の形状を維持します。 若い木部の皮を剥いで神や舎利とした場合は樹脂や防腐効果の高い成分が無く短時間で腐ってしまいます。 小品盆栽のように数年しか経っていない苗木の神や舎利はすぐに芯まで腐り無くなってしまうのです。 早く作る小品盆栽と神や舎利とは両方共手に入れるのは難しい相談です。 樹脂や防腐効果の高い成分も光合成で作られるので20年前に木部を作った時の葉の量と比較して充分な葉の量が無いと埋めきれずスカスカになってしまいます。 これは畑で培養した苗木を持ち込んでも駄目だとも言えます。 神や舎利とは簡単に得られるものではありません。 |
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苗木を育てて盆栽にしようとする場合のポイントは、2〜3本の枝を伸ばすとき小枝を間引きスカスカにしておく事です。 日当たりの良い幹には芽が発生するので、そこに枝を作るのが容易ですが密生して芽が飛んでしまっては縮めるのが難しくなります。 木部が若い間は皮を剥いてジンにしようと考えないほうが良いでしょう。 木部が白身の間は生きるために水が通っていて、野菜のように腐りやすいからです。 赤身ができてくれば、その枝はジンとしても長持ちし鑑賞できるようになります。 生育場所は石灰岩の割れ目といった所が最も似合いの場所と言えるでしょう。 高山であっても、アルカリ性が良い。 鉢底には木炭や消し炭を敷き詰めると成績が良いです。 春に植え変えると換羽状態が激しいので秋が良いと言われます。 比較的に土が乾いた状態が良く、枝を思いきって切った場合は同時に根も切らないとバランスが狂い小根が腐り出す。 成長は遅く、大木にはならないため肥料は少なめに心がける。 従来から山取りの活着には川砂を用いています。 根腐れした苗木は川砂に植え替えて半日陰に置けば挿し木状態でも新しい根を出すものです。 |
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松柏類に見られる神や舎利は真拍や杜松では自然にも多くあり見所として格別です。 むしろ真拍や杜松に神や舎利の無い方が未熟に見えるほどであります。 神や舎利は欠かすことの出来ない要素といえる程です。 白いシャリと緑の葉と幹と一体となっています。 それは腐れた不潔感を示すのではなく、釈迦の舎利をイメージした高い意識を表現するものが最高なのです。 一般には高山の厳しい自然に耐えて育つ姿が見て取れれば良いのです。 山取りの素材に付いている神や舎利は人為では出せない造形美があります。 汚れを落として磨いていき、手を加える場合でも加工の跡が見えるようではいけません。 一般に盆栽は枝の配置などはうるさく言われますが真拍や杜松はそんな制約はありません。 捻転する幹枝と水吸いと神や舎利と少しの葉は自由に変化していて良いのです。 そのために、神や舎利が有ればそこから間延びした枝先に葉が付いたような盆栽に成らないような素材でも間延びした枝を曲げて手繰り込みができれば良い盆栽になるのです。 極端な曲げ込み手繰り込みは枝が折れてしまいますが、割り込みを入れたり保護材で巻いたりして慎重に行ないます。 割っても良いが、折れた所は予後不良です。 皮が剥がれ難くて成長の旺盛な10月頃は保護テープで乾燥しなければ皮がピリピリと割れてもすぐにカルスが覆ってきます。 しかし木部が折れるとまずい。 杜松の葉が檜葉となった真拍は古くはとても面白い技がありました。 山取りの木の幹を短くする方法です。 真拍の幹が舎利となって小根の方に向かって細くなります。 これはバランスも悪く、幹の下半分は切り捨てたいと思う素材の下半分を短縮するのです。 舎利は生きている部分ではなく木体の保持の役割ですから切り捨てても生死に影響しないのです。 この事を理解した先輩たちは、短縮したい部分の舎利を削り取りしなやかにして巻き取り鉢の中に埋め込んでしまったのです。 これで幹が形良い長さに納まってしまいました。 古木は幹からはなかなか根が出なかったのです。 杜松の山木も土中の根も舎利となっていて長く伸びた先に小根があります。 この小根まで大切に掘り取ってくれば枯らさずに持ち込めるかもしれません。 太い舎利付きの根は厚い皮があり幹と同じようになっているのでここからの発根を期待するよりも短縮の裏技を使うか山で根接ぎを施すか、ただし根接ぎしても移植の時に外れてしまう恐れがありますからクギを打つなどで固定します。 葉がバラバラに乱れるタイプと細かく纏まるタイプがあります。 また、杉葉といって杜松の葉のような葉を出し易いタイプもあります。 幹枝が良いが葉性がよくない場合に衣替えと言って小枝を接ぎ替えてしまう方法があります。 この方法では杜松を良い真拍に変えてしまう事もできます。 |
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山採りの粗木です。 今は元気を付ける様にしています。 シャリが凄いのです。 |
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この2本も山採りの粗木です。 今は元気を付ける様にしています。 シャリが凄いのです。 |
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糸魚川産のシャリが良くなってきました。 小さくてもシャリが凄いのです。 |
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紀州産の株立ちの小品。 |
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シャリ持ちの太い小品。 |
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ミヤマビャクシンは高山の岩場に生える常緑の低木。 北海道から中部山岳地帯、屋久島まで分布し石灰岩地の岩壁にわずかに生育する。 基本的には高山に分布するが、低地であっても各地に点々と見られ、地形が非常に急峻で他の高木と競争のないような立地に依存的に隔離分布するようである。庭木や盆栽として人気があり乱獲されたため、低地では個体数が少なくなった側面もある。 幹は立ち上がらず、地表に沿ってうねりながら伸びる。枝は斜上し、葉を密に付ける。葉は風当たりの強い場所で特に密に付くが、風当たりの弱い場所では密度がやや低くなる。葉は若い段階では針葉が多いが、生長すると鱗片葉のみになり、キズによってスギ葉が出たりする。 風当たりの弱い場所では枝はやや高く伸び上がるようであり、風当たりの強い場所では厳しい環境に耐え忍んで生育していることが伺われる。。 |
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槙柏盆栽は幹や枝が枯れて腐り果てたようなものが好まれます。 そのために、元気の良い丸幹は良くないのです。 枯れた部分が有れば良いという条件で幹や枝の形までバランスを求めると物が無くなってしまいます。 だから、シンパクの盆栽は全ての形状が許されます。 一度枯れる寸前までになった木を暫く生育を計って充分生きる力を蓄えるまで木質部を育てなければならないのですよ。 柔らかく育った木質部はまた腐りやすいことが分かっていますので、難しい |
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この槙柏盆栽も立派な神付きになりそうです。 |